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行政手続の適正化について


                                 愛知学院大学法務支援センター教授 榊原 志俊 

 国民や住民が国や地方団体の行政機関から法律に基づいて許認可(例えば営業免許とか運転免許)を得るためには、申請による必要があります。また、許認可を得た後にその法律に違反したりするとその許認可が取り消されることがあります(このような処分を不利益処分といいます。)。
 このように申請に対する処分や不利益処分の手続きやあり方について、一昔前まではまとまった法律上の規定はありませんでした。個々の法律に個別の手続き(処分理由の付記、審査基準・処分基準の定め、聴聞の実施等)についての規定が置かれることはあっても精粗の違いも大きいといった現実がありました。しかも、実態としても、理由付記について根拠条文だけを記載したような場合、審査基準・処分基準は作られていないか、作られていても一般に(又は当事者にさえ)示されていないような場合、聴聞も形式的に開かれるだけといった場合が多くありました。
 また、申請や受理については、個別法にも規定が置かれることもなく、窓口で受け付けない、預かる、突っ返す(返戻)、応答をしない、握りつぶすといった不適切な取扱いが少なからず見受けられたところです。
 このような現実に対して、裁判所は個別の法律の解釈によって、行政手続法理を形成してきたのですが、判例法では法律上の不備を一般的に是正するには限界がありました。そこで、統一的な事前手続きについての立法、すなわち行政手続法の制定の必要性が唱えられてきました。この動きはわが国の強固な縦割行政によってほとんど進まなかったのですが、90年代の規制緩和の流れの中で、行政の迅速化、適正化、透明性の確保の要請が高まり、平成5年に至り、漸く「行政手続法」(平成5年法律88号)が成立しました〔平成6年10月1日施行〕。これによって、行政処分についての統一的な手続法制が整備されました(併せて行政指導等についても規定しておりますが、ここでは省略します)。
 同法第1条(目的)は「この法律は、処分……に関する手続……に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(……)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。」と定めております。
 そして、申請に対する処分については、審査基準の設定、公開の義務付け(5条)、標準処理期間の定め(6条、努力義務)、事務所に到達した申請に対する審査の開始の義務付け(7条)、申請を拒否する処分の際の理由の提示の義務付け(8条)などを定めています。不利益処分については、処分基準の設定、公開の努力義務化(12条)、不利益処分の際の理由の提示の義務付け(14条)の他、処分の相手方の権利利益を保護するため、反論、防御の手立てを定めております。すなわち、不利益処分を受ける者には弁明の機会を付与することとし、特に不利益の程度が大きい場合(免許の取消等)には、聴聞手続を保障し、そのために多くの規定を用意しております(13条、聴聞手続については15条以下、弁明の機会の付与については29条以下)。
 このように行政手続法の制定によって、行政手続の適正化が大きく進むことになりました。
(AGULS第17号(2018/12/25)掲載)