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改正相続法における自筆証書遺言の見直し


愛知学院大学法務支援センター特別教授 弁護士 國田 武二郎
Q : 改正相続法で、自筆証書遺言の作成がより手軽になったと聞きますが、その詳細を教えて下さい。
A : 現在の自筆証書遺言は、①全文を自筆で書く、②家庭裁判所の検認が必要で、このため、相続手続きに時間がかかる。
 ③自宅などにこっそり保管するので、紛失や忘れる可能性がある。④形式や内容に間違いがあると無効になる。⑤第3者に
 内容を改ざんされる恐れがある等の問題ありました。
  まず、①の点ですが、不動産、預貯金、株式、国債などの有価証券、借入金などの財産目録をパソコンで作成することが
 可能になり、自筆で書く負担が大きく軽減されました。また、パソコンなどで財産目録の一覧を作れない場合は、不動産登
 記事項証明書や通帳などのコピーの添付によるリストの作成でも構いません。但し、「自筆証書遺言書」の本体と「財産目
 録」とに割り印をして、一体性のあるものにすることや、財産目録の全ページには署名・押印をすることが必要です。この
 形式面の改正は、平成31年1月から施行ました。
  ②以下の点ですが、法務局に自筆証書遺言を法務局に預けることが可能となりました(費用は、数百円の印紙代のみです
 ので、費用は安く済みます)。この結果、紛失や第三者に内容を改ざんされる恐れがなくなりました。また、保管に際し
 て、法務局の事務官が遺言書を審査し、署名捺印や日付など形式に不備があれば指摘してくれます。このため、家庭裁判所
 の「検認手続き」(相続人などの立会いの下、遺言書を開封し内容を確認すること。これを怠れば5万円以下の過料に処せ
 られます)が不要となり、すぐに相続手続きを始めることができます(法務局に預けない場合は、これまで通り検認手続き
 が必要です)。そして、残された家族は、相続開始後に遺言書の検索ができ、写しの請求、閲覧もできます。相続人の一人
 が写しの交付を受け、閲覧した場合は、他の相続人に対し法務局から「遺言書が保管されている」旨の通知が届きます。こ
 の法務局による保管制度は、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」により規律され、2020年7月1日から施
 行されます。
  このように、自筆証書遺言が手軽にかつ便利になったことから、今後、利用される度合いが多くなると思われます。
(AGULS第35号(2020/6/25)掲載 )