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学生向け講演会「学生生活と法的責任(1)」(6月23日開催)


学生課主催「学生のための安全管理講習会」において、田中淳子教授が講演されます。

日 時 : 平成29年6月23日(金)
場 所 : 7号館7103教室
演 題 : 「学生生活と法的責任(1)」
                      学生生活と法的責任(1)

                 ~飲酒による生命・健康の被害を与えた場合~

1.飲酒・喫煙と未成年  未成年者喫禁止法、未成年者飲酒禁止法 により未成年者の喫煙、飲酒は禁止されている。
未成年者喫禁止法 未成年者飲酒禁止法
第1条 満20歳未満の者の喫煙を禁止している。
第2条 未成年者が第1項に違反した場合、喫煙のために所持する煙草およびその器具について、行政処分としての没収が行われる
第3条 未成年者の喫煙を知りつつも制止しなかった親権者やその代わりの監督者は、刑事罰である科料(1万円末満)に処せられる
第4条 煙草又は器具の販売者は満20歳未満の者の喫煙の防止に資するために年齢の確認その他必要な措置を講ずるものとする。努力義務という規定のされ方である
第5条 満20歳未満の者が自ら喫煙することを知りながらたばこや器具を販売した者は、50万円以下の罰金に処せられる
第6条 法人の代表者や営業者の代理人、使用人その他の従業者が、法人ないし営業者の業務に関して満20歳未満の者に煙草を販売した場合には、行為者とともに法人ないし営業者を前条と同様に罰する(両罰規定)
第1条
 1.満20歳未満の者の飲酒を禁止する
 2.未成年者の親権者や監督代行者に対して、未成年者の飲酒を知った場合に、これを制止する義務を規定する
 3.酒類を販売する営業者(酒屋、コンビニエンスストアなど)又は供与する営業者(飲食店、居酒屋、スナックなど)が、満20歳未満の者に対して、飲酒することを知りながら、酒類を販売又は供与することを禁止する
 4.酒類を販売する営業者又は酒類を供与する営業者に対して、満20歳未満の者の飲酒を防止するための、年齢確認その他必要な措置をとるものとされる
第2条  未成年者が、飲用のために所有・所持する酒類およびその器具について、没収・廃棄などの必要な処置が、行政処分として行われるとしている。
第3条  
 1.未成年者自身が飲酒することを知りながら、未成年者に酒類を販売・供与した営業者に対して、50万円以下の罰金を科す
 2.未成年者の飲酒を知って制止しなかった親権者や監督代行者に対して、科料を科す
2 飲酒・喫煙と自己決定権  成年であれば、飲酒、喫煙は、自分の自由な意思で決定できることがらである(自己決定権の尊重)
                         ↓しかし
3 自己決定であればどのような場合であっても、その責任は自己責任か?
★ 資料 新聞の記事から少し考えてみよう。
   
4 法的な責任  飲酒が原因で一緒に飲んでいた仲間の体調に異変(健康被害)が生じたり、その後、死に至ってしまったら、法的には少なくとも3つの責任が生じる可能性が考えられる。
 (1)【民事上の責任】
●債務不履行責任(民法415条)債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする
●不法行為(民法709条) 
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
→たとえば、仲間と一緒に飲んでいる時に、嫌がる仲間に酒をすすめ短時間の間に大量のアルコールを飲ませた結果、泥酔し、嘔吐物を喉に詰まらせ窒息死してしまった場合には、故意(無理やり)に飲酒させることにより、あるいは安全を確保するよう配慮する義務に違反したりしたことで法律上保護される権利・利益(生命、健康)を侵害した者は、莫大な額の損害賠償を負担することも考えられる。

【裁判例】福岡高平成18年11月14日判例タイムズ1254号203頁
大学のボート部に所属する新入生Cが、同部の新入生歓迎コンパで早飲み競争(一気飲み)等をして意識がない状態になったのに、Cを医療機関に搬送せず、同じ新入生のアパートに運んで寝かせていたところ、翌朝、死亡するに至ったという場合に、同部の部長やキャプテンを始め、Cを同アパートに運ぶなどした上級生部員らには、Cに対する保護義務違反【安全配慮義務違反】があり、民事上の責任を免れない。
 具体的には、二次会のかなり早い段階で高度に酩酊してしまったCについて,関係者は,Cの生命身体に対する安全の確保が必要。たまたまCの近くに居合わせた上級生、前年のキャプテン,車への同乗を指示された者,見回りへの同行を依頼された者,新入生の世話係の役目を担っていた者,Cを宿泊場所に搬送するのを手伝った者,自動車を保有していたために,酩酊した新入生の搬送役を割り当てられた者らは、いずれも偶然に酩酊したCとの関わりを持ったにすぎない。
しかし、いやしくも一旦そのような関係が形成された以上,Cに対する安全配慮義務(保護義務)を負うものであり,同義務を全うしなければならない立場にあるものというべきである。
(2)【刑事上の責任】
●傷害罪(刑法204条)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する
●強要罪(刑法223条)
1.生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する
2.親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする
3.前2項の罪の未遂は、罰する。
●保護責任者遺棄罪(刑法218条)
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する
→泥酔した仲間のために救急車を呼んで保護することもなく、その場に放置して帰ってしまう行為も、「仲間だったら酒を飲めよ、飲まなかったら明日から仲間じゃない」といって飲酒を強要することも、それによって生命・健康を害する結果を招いた場合には、上記の刑法上の責任が発生することも考えられる。

(3)【行政上の責任】・・・未成年者飲酒禁止法上の責任(前出)

5 社会におけるみなさん自身の責任を自覚しよう!

  みなさんは、社会的存在 →「権利」を持ち 「義務」を負う 権利主体
  ひとたび、事故・事件が発生したら、自分の権利・義務について知らないでは済まされない!
  

 注意! アルコールは、中毒症状を引き起こす薬物とも言われる。すなわち、正常な判断をすることができない状態を人為的に引き起こすからだ。結果として、過度の飲酒は、危険運転による過失致死や強姦、殺人等の犯罪等の危険への接近行為ともいえる。自らそれに近づくことも、仲間をそのような状況に近づけることも決してしてはならない。