コラム:教えて!18歳成年制度 Q&A [第5回]
教えて!18歳成年制度 Q&A [第5回]
4月から愛知学院大学に入学する予定の現在高校三年生のあいりさん(18歳)。大学の近くにアパートを借りたい。両親は、自宅からでも通えるし、心配だからと賛成ではない。あいりさんも強行突破しようとまでは思っていない。でもこれからは、いろいろ自分で判断しなければならないことが多くなるし、一度、勉強のために家を借りるための契約についてどんな感じなのか聞いてみたいなと思っている。
Q1 他人の家を借りる契約「賃貸借契約」ってどういうものなの?
Ans. あいりさんが大学近くのアパートの一室を借りたい、と考えた場合、アパートの所有者(大家さん)との間で、賃貸借契約を結ぶことになります(民法601条)。品物を受け取り、代金を支払えばよい売買契約と異なり、アパートの一室を借りる、という契約は、高額な建物を他人が長期に渡り利用することを認めます。大家さんはその間、自分の建物でも勝手に使用することはできなくなるのです。家賃をきちんと払ってくれるか、丁寧に使ってくれるか等、誰に貸すかはとても重要なポイントとなります。家賃の不払いはもちろん「ペット禁止」や「どんちゃん騒ぎをしない」等、大家さんとの約束(契約内容)を破り、信頼関係を壊してしまうような行動をとると契約が解除され、出ていかなくてはならなくなります。そこで、今回は、特に、標準的な賃貸借契約書にはどういう約束が書かれているか。契約は自由ですので、多くは、標準的な契約にプラスして特別な約束(特約)が追加されている場合も多いのです。重要な点については、契約時に説明をしてくれますが、まずは、自分でもきちんと読み、理解できるようになりましょう。なにかトラブルになった時は、契約した内容に照らして解決されていきます。
国土交通省のHPには、標準型の契約書が掲載されています(001230070.docx (live.com)
それによれば、契約条項は、1条から14条で構成されています。
その中で、いくつか重要な点を指摘したいと思います。たとえば、
・・・・・・・・・・
(賃料)
第4条 乙は、頭書(3)の記載に従い、賃料を甲に支払わなければならない。
2 1か月に満たない期間の賃料は、1か月を30日として日割計算した額とする。
3 甲及び乙は、次の各号の一に該当する場合には、協議の上、賃料を改定することができる。
一 土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により賃料が不相当となった場合
二 土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当となった場合
三 近傍同種の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合
→(賃料)については、契約後、上がる可能性もある(もちろん、話合う機会はあります)
(敷金)
第6条 乙は、本契約から生じる債務の担保として、頭書(3)に記載する敷金を甲に交付するものとする。
2 甲は、乙が本契約から生じる債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、乙は、本物件を明け渡すまでの間、敷金をもって当該債務の弁済に充てることを請求することができない。
3 甲は、本物件の明渡しがあったときは、遅滞なく、敷金の全額を乙に返還しなければならない。ただし、本物件の明渡し時に、賃料の滞納、第15条に規定する原状回復に要する費用の未払いその他の本契約から生じる乙の債務の不履行が存在する場合には、甲は、当該債務の額を敷金から差し引いた額を返還するものとする。
4 前項ただし書の場合には、甲は、敷金から差し引く債務の額の内訳を乙に明示しなければならない。
→敷金とは、一般的に賃料が支払われないときのためのもの。大家は先に部屋を貸していますので、あとは、借主がお金を支払う義務を果たしてくれるか大家は不安ですので敷金を事前に受け取ります。
(禁止又は制限される行為)
第8条 乙は、甲の書面による承諾を得ることなく、本物件の全部又は一部につき、賃借権を譲渡し、又は転貸してはならない。
2 乙は、甲の書面による承諾を得ることなく、本物件の増築、改築、移転、改造若しくは模様替又は本物件の敷地内における工作物の設置を行ってはならない。
3 乙は、本物件の使用に当たり、別表第1に掲げる行為を行ってはならない。
4 乙は、本物件の使用に当たり、甲の書面による承諾を得ることなく、別表第2に掲げる行為を行ってはならない。
5 乙は、本物件の使用に当たり、別表第3に掲げる行為を行う場合には、甲に通知しなければならない。
別表とは以下の通り
別表第1(第8条第3項関係)
一 銃砲、刀剣類又は爆発性、発火性を有する危険な物品等を製造又は保管すること。
二 大型の金庫その他の重量の大きな物品等を搬入し、又は備え付けること。
三 排水管を腐食させるおそれのある液体を流すこと。
四 大音量でテレビ、ステレオ等の操作、ピアノ等の演奏を行うこと。
五 猛獣、毒蛇等の明らかに近隣に迷惑をかける動物を飼育すること。
六 本物件を、反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供すること。
七 本物件又は本物件の周辺において、著しく粗野若しくは乱暴な言動を行い、又は威勢を示すことにより、付近の住民又は通行人に不安を覚えさせること。
八 本物件に反社会的勢力を居住させ、又は反復継続して反社会的勢力を出入りさせること。
別表第2(第8条第4項関係)
一 階段、廊下等の共用部分に物品を置くこと。
二 階段、廊下等の共用部分に看板、ポスター等の広告物を掲示すること。
三 観賞用の小鳥、魚等であって明らかに近隣に迷惑をかけるおそれのない動物以外の犬、猫等の動物(別表第1第五号に掲げる動物を除く。)を飼育すること。
別表第3(第8条第5項関係)
一 頭書(5)に記載する同居人に新たな同居人を追加(出生を除く。)すること。
二 1か月以上継続して本物件を留守にすること。
(協議)
第18条 甲及び乙は、本契約書に定めがない事項及び本契約書の条項の解釈について疑義が生じた場合は、民法その他の法令及び慣行に従い、誠意をもって協議し、解決するものとする。
→契約中にも、契約の内容を変更する場合がでてきたら、誠実に対応することが求められます、
(特約条項)
第19条 第18条までの規定以外に、本契約の特約については、下記のとおりとする。
特約の内容を個別の契約で記載することが多いので、この部分の記述を必ず確認してくださいね。口頭での説明とは異なることもある
かもしれません。要注意!!
[参照条文 民法]
(成年)
第4条 年齢18歳をもって、成年とする。
(未成年者の法律行為)
第5条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
(賃貸借)
第601条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
次回は、「契約書」、「約款(やっかん)」といった書面を読んでみよう。自分ひとりでも契約ができるあいりさん。自己決定したら自己責任を負うんだけれど、あらかじめ、どんな権利や義務が発生するかは「契約書」や「約款(やっかん)」と呼ばれる書面に書いてある。自分で読めるようになれると見通しが立ちますね。読むためのポイント等について解説します。
[参考]
法務省:広報用(簡易版)「成人年齢の引下げ-18歳がいきいきと活躍する社会へ」
https://www.moj.go.jp/content/001300586.pdf
消費者庁:「18歳から大人」特設ページ
https://www.moj.go.jp/content/001300586.pdf
Twitter https://twitter.com/caa_18sai_otona
NHK 民法改正・少年法改正「18歳何が変わる?」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/adult-age-reduction/
5 相談先
愛知学院大学:愛学リーガル・クリニック無料法律相談所(日進・MKC隔週水曜)
電話による相談申込:0561-73-1111(内)5106・5105
メールによる相談申込
http://legal-supports.agu.ac.jp/free-legal-consultation/index.html
消費者庁:ホットライン 188 (いやや) 相談窓口直接つながる
愛知県:愛知県県民文化局県民生活部県民生活課 消費生活相談・消費者教育グルー
プ ダイヤルイン:052-954-6603
愛知県弁護士会:https://www.aiben.jp/soudan/
0570-783-110(なやみ110番)
日本司法支援センター(法テラス)
0570-078374(IP電話からは、03-6745-5600)
4月から愛知学院大学に入学する予定の現在高校三年生のあいりさん(18歳)。大学の近くにアパートを借りたい。両親は、自宅からでも通えるし、心配だからと賛成ではない。あいりさんも強行突破しようとまでは思っていない。でもこれからは、いろいろ自分で判断しなければならないことが多くなるし、一度、勉強のために家を借りるための契約についてどんな感じなのか聞いてみたいなと思っている。
Q1 他人の家を借りる契約「賃貸借契約」ってどういうものなの?
Ans. あいりさんが大学近くのアパートの一室を借りたい、と考えた場合、アパートの所有者(大家さん)との間で、賃貸借契約を結ぶことになります(民法601条)。品物を受け取り、代金を支払えばよい売買契約と異なり、アパートの一室を借りる、という契約は、高額な建物を他人が長期に渡り利用することを認めます。大家さんはその間、自分の建物でも勝手に使用することはできなくなるのです。家賃をきちんと払ってくれるか、丁寧に使ってくれるか等、誰に貸すかはとても重要なポイントとなります。家賃の不払いはもちろん「ペット禁止」や「どんちゃん騒ぎをしない」等、大家さんとの約束(契約内容)を破り、信頼関係を壊してしまうような行動をとると契約が解除され、出ていかなくてはならなくなります。そこで、今回は、特に、標準的な賃貸借契約書にはどういう約束が書かれているか。契約は自由ですので、多くは、標準的な契約にプラスして特別な約束(特約)が追加されている場合も多いのです。重要な点については、契約時に説明をしてくれますが、まずは、自分でもきちんと読み、理解できるようになりましょう。なにかトラブルになった時は、契約した内容に照らして解決されていきます。
国土交通省のHPには、標準型の契約書が掲載されています(001230070.docx (live.com)
それによれば、契約条項は、1条から14条で構成されています。
その中で、いくつか重要な点を指摘したいと思います。たとえば、
・・・・・・・・・・
(賃料)
第4条 乙は、頭書(3)の記載に従い、賃料を甲に支払わなければならない。
2 1か月に満たない期間の賃料は、1か月を30日として日割計算した額とする。
3 甲及び乙は、次の各号の一に該当する場合には、協議の上、賃料を改定することができる。
一 土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により賃料が不相当となった場合
二 土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当となった場合
三 近傍同種の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合
→(賃料)については、契約後、上がる可能性もある(もちろん、話合う機会はあります)
(敷金)
第6条 乙は、本契約から生じる債務の担保として、頭書(3)に記載する敷金を甲に交付するものとする。
2 甲は、乙が本契約から生じる債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、乙は、本物件を明け渡すまでの間、敷金をもって当該債務の弁済に充てることを請求することができない。
3 甲は、本物件の明渡しがあったときは、遅滞なく、敷金の全額を乙に返還しなければならない。ただし、本物件の明渡し時に、賃料の滞納、第15条に規定する原状回復に要する費用の未払いその他の本契約から生じる乙の債務の不履行が存在する場合には、甲は、当該債務の額を敷金から差し引いた額を返還するものとする。
4 前項ただし書の場合には、甲は、敷金から差し引く債務の額の内訳を乙に明示しなければならない。
→敷金とは、一般的に賃料が支払われないときのためのもの。大家は先に部屋を貸していますので、あとは、借主がお金を支払う義務を果たしてくれるか大家は不安ですので敷金を事前に受け取ります。
(禁止又は制限される行為)
第8条 乙は、甲の書面による承諾を得ることなく、本物件の全部又は一部につき、賃借権を譲渡し、又は転貸してはならない。
2 乙は、甲の書面による承諾を得ることなく、本物件の増築、改築、移転、改造若しくは模様替又は本物件の敷地内における工作物の設置を行ってはならない。
3 乙は、本物件の使用に当たり、別表第1に掲げる行為を行ってはならない。
4 乙は、本物件の使用に当たり、甲の書面による承諾を得ることなく、別表第2に掲げる行為を行ってはならない。
5 乙は、本物件の使用に当たり、別表第3に掲げる行為を行う場合には、甲に通知しなければならない。
別表とは以下の通り
別表第1(第8条第3項関係)
一 銃砲、刀剣類又は爆発性、発火性を有する危険な物品等を製造又は保管すること。
二 大型の金庫その他の重量の大きな物品等を搬入し、又は備え付けること。
三 排水管を腐食させるおそれのある液体を流すこと。
四 大音量でテレビ、ステレオ等の操作、ピアノ等の演奏を行うこと。
五 猛獣、毒蛇等の明らかに近隣に迷惑をかける動物を飼育すること。
六 本物件を、反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供すること。
七 本物件又は本物件の周辺において、著しく粗野若しくは乱暴な言動を行い、又は威勢を示すことにより、付近の住民又は通行人に不安を覚えさせること。
八 本物件に反社会的勢力を居住させ、又は反復継続して反社会的勢力を出入りさせること。
別表第2(第8条第4項関係)
一 階段、廊下等の共用部分に物品を置くこと。
二 階段、廊下等の共用部分に看板、ポスター等の広告物を掲示すること。
三 観賞用の小鳥、魚等であって明らかに近隣に迷惑をかけるおそれのない動物以外の犬、猫等の動物(別表第1第五号に掲げる動物を除く。)を飼育すること。
別表第3(第8条第5項関係)
一 頭書(5)に記載する同居人に新たな同居人を追加(出生を除く。)すること。
二 1か月以上継続して本物件を留守にすること。
(協議)
第18条 甲及び乙は、本契約書に定めがない事項及び本契約書の条項の解釈について疑義が生じた場合は、民法その他の法令及び慣行に従い、誠意をもって協議し、解決するものとする。
→契約中にも、契約の内容を変更する場合がでてきたら、誠実に対応することが求められます、
(特約条項)
第19条 第18条までの規定以外に、本契約の特約については、下記のとおりとする。
特約の内容を個別の契約で記載することが多いので、この部分の記述を必ず確認してくださいね。口頭での説明とは異なることもある
かもしれません。要注意!!
[参照条文 民法]
(成年)
第4条 年齢18歳をもって、成年とする。
(未成年者の法律行為)
第5条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
(賃貸借)
第601条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
次回は、「契約書」、「約款(やっかん)」といった書面を読んでみよう。自分ひとりでも契約ができるあいりさん。自己決定したら自己責任を負うんだけれど、あらかじめ、どんな権利や義務が発生するかは「契約書」や「約款(やっかん)」と呼ばれる書面に書いてある。自分で読めるようになれると見通しが立ちますね。読むためのポイント等について解説します。
[参考]
法務省:広報用(簡易版)「成人年齢の引下げ-18歳がいきいきと活躍する社会へ」
https://www.moj.go.jp/content/001300586.pdf
消費者庁:「18歳から大人」特設ページ
https://www.moj.go.jp/content/001300586.pdf
Twitter https://twitter.com/caa_18sai_otona
NHK 民法改正・少年法改正「18歳何が変わる?」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/adult-age-reduction/
5 相談先
愛知学院大学:愛学リーガル・クリニック無料法律相談所(日進・MKC隔週水曜)
電話による相談申込:0561-73-1111(内)5106・5105
メールによる相談申込
http://legal-supports.agu.ac.jp/free-legal-consultation/index.html
消費者庁:ホットライン 188 (いやや) 相談窓口直接つながる
愛知県:愛知県県民文化局県民生活部県民生活課 消費生活相談・消費者教育グルー
プ ダイヤルイン:052-954-6603
愛知県弁護士会:https://www.aiben.jp/soudan/
0570-783-110(なやみ110番)
日本司法支援センター(法テラス)
0570-078374(IP電話からは、03-6745-5600)