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TOP >  ブログ >  2018年度 >  いわゆる死後離婚について

いわゆる死後離婚について


                             愛知学院大学法務支援センター教授・弁護士 國田 武二郎
Q:亡くなった配偶者の親や兄弟姉妹との関係を解消する「姻族関係終了届」を出して、いわゆる「死後離婚」をする人が急
  増していると聞きますが、「姻族関係終了届」とは、どのような手続きですか。
A:夫の死後、こじれた嫁と舅(しゅうと)あるいは姑(しゅうとめ)関係の継続や、義理の親の介護を担う不安などから、
  姻族関係の終了届を出す数が急増しています。法務省の戸籍統計によると、平成17年度は1772件だった姻族関係終
  了届の提出数は、27年度には2783件に増えています。その背景には、「夫が亡くなったことを自分のせいにされ
  た」「介護にまきこまれたくない」等、30代~50代の女性が多く、嫁姑の問題に起因するものがほとんどです。
   法律では、結婚した場合「3親等内の姻族を親族」と定めています(民法725条3号)。例えば、妻が、夫と結婚した場
  合、夫の両親、夫の兄弟姉妹、兄弟の子ども(甥、姪)又は夫の両親にさらに両親(夫からみれば、祖父、祖母)がいた
  場合は、祖父祖母までが、親族となります。このように姻族関係が生じた場合、法律は、「直系血族及び同居の親族は、
  お互いに扶(たす)け合わなければならい義務」(730条)あるいは家庭裁判所の判断で「扶養義務を負わされる」場合が
  あります(877条2項)。しかし、同居していた舅や姑にさんざん虐められた妻が、夫の死亡後も、舅や姑の面倒を見るの
  は嫌だ、夫の親族と縁を切りたいと考える人もいます。離婚すれば、自動的に姻族関係は消滅しますが、配偶者が亡く
  なった場合、姻族関係は継続されます。したがって、妻が夫死亡後でも、舅や姑の面倒を見る義務が生じたり、再婚した
  場合も、死亡した夫の側との姻族関係も終了しないので、複数の姻族関係が生じる場合もあります。つまり、前配偶者の
  両親の面倒を再婚後も負うという義務が生じる場合はあります。このような場合、「姻族関係終了の終了届」を提出する
  ことにより、姻族関係を終了させることができます(民法728条2項)。家庭裁判所への申立も不要です。本人の意思で自
  由に決めることができ、相手方の血族の了解も不要です。
   提出方法は、本籍地もしくは住居地の市区町村に「姻族関係終了届」を提出するだけで手続きは終了します。いつでも
  提出でき、期限はなく、届け出日から姻族関係は終了します。なお結婚前の戸籍や姓に戻したい場合、「復氏届」を提出
  することになります。姻族関係が終了することによって、扶養義務や扶け合いの法的義務はなくなります。なお、夫の遺
  産を相続した場合でも、遺産を返却する必要はなく、遺産を受け取ることができます。また、妻が「姻族関係終了届」を
  出しても、子どもと夫側の親族関係は変わらないので、夫の死後、夫の祖父母が亡くなった場合、子は、代襲相続人とし
  て、祖父母の遺産の相続権はあります。
 (AGULS第9号(2018/04/25)掲載)