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法定速度


                                  愛知学院大学法務支援センター教授 原田 保 
 
 「法定速度遵守車」とか「私は法定速度で走ります」とかいった表示を掲げる自動車があります。趣旨は判りますが、気になる点を書きます。
 自動車走行の際に守るべき最高速度には、
  ① 一般道路60km/h、高速道路100km/h、という一律の速度
  ② 40km/h、50km/h、というように、道路ごとに決められた速度
の2種類があります。現行「道路交通法」昭和35年制定当初の88条は「法令で定める最高速度」または「公安委員会が定める最高速度」をこえてはならないと規定していました。法令で定める速度、つまり文字通りの「法定速度」が①であり、政令「道路交通法施行令」が車種ごとに規定しています。公安委員会が定める速度が②であり、標識や路面に書いてあります。これは「指定速度」または「規制速度」と呼ばれます。
 このように、「法定速度」とは元々「一般道路60km/h」のことですから、この用語法を前提にすると、「私は法定速度で走ります」という宣言は「40km/h指定道路も60km/hで走ります」という速度違反宣言になってしまいます。勿論、「指定速度遵守」の趣旨は明白だし、「指定速度」を「法定速度」と呼ぶ例は他にもあります。
 「誤用」という評価も可能です。でも、現在では殆どの道路に指定速度があり、元々の法定速度が適用される一般道路は稀ですから、速度と言えばまず指定速度です。速度遵守義務規定も「法定速度または指定速度」から「指定速度または法定速度」に変わりました。指定速度も「道路交通『法』」に規定されているのだから、「法定」という言葉は不可だと断言する絶対的理由も見当たりません。「法定速度」という言葉に「指定速度」を含める広い意味の用語法と認める方が、社会の実態に適合するのかもしれません。
(AGULS第19号(2019/2/25)掲載)