グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



TOP >  ブログ >  2020年度 >  新型コロナウイルスと労働問題3

新型コロナウイルスと労働問題3


右寄せ》法務支援センター特別教授(弁護士) 國田武二郎
Q:ホテルのフロントで働いている社員ですが、会社から「新型コロナウイルス感染拡大の影響で客が来ないので、会社の売
 上も落ちて、これ以上、雇うことはできないので退職して欲しい。応じなければ整理解雇をする。」と言われました。応じ
 なければいけないでしょうか。
A:コロナ禍のなかで、企業の人減らしが加速しています。社員の希望退職を募った上場企業は今年上半期(1月~6月)だけで
 41社あり、募集人数も7000人を超えて、昨年1年間を上回っています。下半期はさらにペースが加速し、募集人数も膨らむ
 ことは必至です。それと併行して解雇や雇い止めも7月半ば時点で、3万人を超えており、秋口には、4万、5万と加速度
 的に増加すると思われ極めて深刻な状況になっています。
  そこで、今後、企業の業績悪化などにで、①「希望退職」あるいは②「整理解雇」の問題が生じますが、①の場合は、使
 用者と労働者との合意で行われることから、使用者は、合意しやすいようにある程度好条件を提示してきます。例えば、退
 職金の上積みや転職支援会社の紹介・費用負担などです。この場合、合意が成立すれば、有効・無効の問題は原則生じませ
 ん。しかし、②の場合は、使用者からの労働者に対する雇用解消の一方的な意思表示です。労働者に責め帰すべき事由のな
 い解雇だけに、使用者側に厳しい制約が課され、通常、4つの要件が必要です。それは、ⅰ人員削減の必要性(企業が倒産
 など経営危機をどうしても回避するためには人員を整理する必要があること)、ⅱ解雇回避措置の相当性(役員報酬の削
 減、労働者の昇給停止や賞与の削減等、広告宣伝費の削減など削減に努力したが、これ以上削減ができないこと)、ⅲ人選
 の合理性(単に労働組合員や女性を対象とした解雇は合理性が否定されます。一応、成績、能力、年齢など基準にな
 る。)、ⅳ手続きの相当性(対象者に解雇の必要性やその時期、方法等について、説明し理解してもらうこと。)です。こ
 の4要件を一つでも欠けば、その整理解雇は無効です。このように、整理解雇の要件が厳しいことから、使用者は、強引
 に「希望退職」あるいは「退職勧奨」を行っていることが、パワハラ・嫌がらせとして近時、社会問題になっております。
  設問の場合も、まず、ホテル側が、退職を勧奨するに際して、どのような条件を提示してくるか検討して見て下さい。そ
 して、応じなければ「整理解雇」だと言われても、法的にはそのような整理解雇は無効です。ホテルのフロント以外の部署
 に移動できないのか、なぜ、自分が整理解雇の対象に選ばれたのかなど、じっくりと会社側の説明を聞き、話し合って見て
 ください。そして、納得がいかなければ、労働局、組合あるいは弁護士等の専門家に相談してみるといいと思います。
(2020年12月9日)