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新型コロナウイルスと労働問題2


法務支援センター特別教授(弁護士) 國田武二郎
Q:飲食店でパートタイマーとして勤務しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で客が来ないので、店主から自宅待
 機を命じられたにもかかわらず「休業手当が出ない」と言われました。本当に出ないのでしょうか。
A:労働基準法では、休業手当が支払われるのは、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」、つまり、使用者側の都合で
 仕事を休むことになった場合、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があると規定しています。新型コロナウイル
 スの影響でも、店側の都合で自宅待機を命じられた場合は、休業手当はもらえます。逆に、感染が怖いので仕事を休みたい
 という場合は、自分の都合ですから休業手当はもらえません。問題は、「緊急事態宣言」を受けて会社や店が休業を余儀な
 くされた場合、不可抗力として休業手当を払わなくても良いかということです。この「不可抗力」の解釈を巡って、今般、
 厚労省は、「不可抗力」とは、①今回の特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請を受け、②テレワークや他の業務への転換
 など努力しても休業が避けられない場合という極めて狭い範囲に限定されると解し、基本的には休業手当を支払うように指
 導しています。無給では、働き手の生活破壊を招くことから、それを防ごうという狙いがあると思われます。設問の飲食店
 の事例では、他の業務などへの転換が図られるかどうかですが、それが、難しければ休業手当は難しいと思われます。
  なお、国も「雇用調整助成金制度」をもうけ、休業手当を支払い、従業員を一時的に休業させた事業主に対し、労働者一
 人につき、一日当たり8,330円を上限に休業補償を助成しています。したがって、苦しいなかでも休業手当を出している事業
 主の方には、出来る限り、この制度を活用すべきです。その他、売り上げが半減した事業主には、上限額を200万(法人)、
 100万(個人事業主)とした「持続化給付金制度」や、各都道府県の自治体が独自で行っている「新型コロナウィルス感染拡
 大防止協力金」や「中小・小規模事業者等持続化補助金制度」などがあるので、これらの制度を利用して、事業主も何とか
 この苦境を乗り越えて欲しいと思います。そうでないと、「休業手当を払うくらいならば出勤させよう」と考える事業主が
 出て人と人の接触を回避しようということができなくなります。なお、従業員の方も、10万円の特定定額給付金以外に、
 離職で住居を失う場合には住居確保給付金(給付額37,000円~48,000円)、休業で生活が困窮する場合には緊急小口資金
 (貸付け上限10万円)、失業で生活が困窮する場合には総合支援資金(貸付上限:単身15万円)等の制度があるのでそれら
 を活用してください。
(2020年12月9日)