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TOP >  ブログ >  2020年度 >  民事執行法の改正(権利行使の実効性を高めました)

民事執行法の改正(権利行使の実効性を高めました)


愛知学院大学法務支援センター教授・弁護士 浅賀 哲
 令和2年4月1日から、改正された民事執行法が施行されます。
1 民事執行制度の説明
  例えば、売掛金の支払いが滞った場合に、取引相手先に対して弁護士に委任して裁判をして、裁判所より「売掛金を支払
 え」との内容の判決を獲得したとします。ところが、判決を獲得しただけでは売掛金の回収が実際にできたとはいえませ
 ん。判決に従い取引相手先が自主的に支払をしてくれれば良いのですが、支払に応じない場合には、相手先の財産である不
 動産、動産、預金等に対して、強制執行手続により差押えをする必要があります。このように相手方の財産に差押えをし、
 換価(売却・競売)し、換価金等を権利者に配当をする一連の手続きを民事執行手続といい、これは民事執行法に基づくも
 のとされています。
2 民事執行法の改正(財産開示制度の実効性の向上)
  民事執行を実際にするためには、相手方に換価(売却・競売)できる財産があることが前提であり、これが権利者側に判
 明していないというケースが実務上珍しくありません。権利者側に相手方の財産が判明していない場合には換価ができませ
 んので、せっかく裁判において支払を命じる判決を獲得しても、実際には売掛金等を回収には至らず、判決はいわば、「紙
 切れ」となってしまいます。権利者は「泣き寝入り」を強いられ、不当な場合も少なくありません。
  従前より民事執行法は財産開示制度を設け、義務者(債務者)に財産を開示するように一応義務付けていました。ところ
 が、義務者が財産を開示しない場合でも、30万円以下の過料の制裁しかないため義務者が開示に応じないことも多く、開
 示制度の利用件数も少ない状況でした。
  かかる事態を受け、民事執行法は①財産開示手続に不出頭の場合等には、刑事罰(6か月以下の懲役又は50万円以下の
 罰金)を科すとの制裁を強化し、開示について実効性の高い内容に改正されました。また、権利者は、②金融機関や、登記
 所、市町村、日本年金機構等から、預貯金、上場株式、国債、土地・建物、給与債権・勤務先についての情報(但し、勤務
 先の情報については、養育費等の債権や生命身体の侵害による損害賠償請求権に基づく場合に限定されます。)を取得する
 ことができるようになりました。これによって、権利者が強制執行をできるケースが拡張されるでしょう。
3 その他
  その他として、③不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策、④国内の子の引渡しの強制執行に関する規律の明確
 化、⑤国際的な子の返還の強制執行に関する規律の見直し等の改正がなされております。
  詳しくは、法務省のホームページなどをご参照ください。
(AGULS第33号(2020/4/25)掲載 )