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TOP >  ブログ >  2020年度 >  不知・誤解の多い事柄

不知・誤解の多い事柄


愛知学院大学法務支援センター教授 原田 保
  幾つか指摘します。正しい情報の拡散に御配慮下さい。
1.夫婦同姓は、日本古来の伝統と違う。
  例えば、源頼朝の妻は北条政子のまま、足利義政の妻は日野富子のままでした。歴代皇后でも、「藤原」「平」といった
 氏は維持されていました。
  多くの国で氏は「父に従属」であり、西洋では「夫に従属」が加わります。細川忠興の妻・明智玉が「細川ガラシャ」と
 名乗ったのは、西洋文化に傾倒したキリシタンの一時的な例外現象です。
 中国大陸や朝鮮半島では、今も婚姻による氏の変更はありません。日本は、明治初期の家制度で、伝統と違う夫婦同姓を強
 制したのです。
2.「法務省が撒骨 (散骨) を認めた」という事実は、存在しない。
  某法務官僚の「現行法上可能」という見解に基づき、撒骨推進団体会長が撒骨を実施して記者会見で公表しました。当該
 法務官僚は記者からの質問に「問題ない」と回答しました。会長は「国の公認」だと喧伝し、会長の勤務先だった新聞は法
 務省の「公式見解」だと「誤報」しました。
  法務省にこのような見解表明の権限はありません。これと同旨の見解を公表した法務官僚はいませんが、違う見解を公表
 した法務官僚はいます。「法務省の見解表明は存在しない」と明言した法務官僚もいます。省内の合意も承認もない撒骨推
 進派官僚1人の個人的見解が「法務省の見解」という偽名で流布され、撒骨業者はこの虚構の権威に依存しているのです。
3.大正11年の少年法は、「18歳未満」だった。
  現行法の20歳未満から18歳未満に引き下げろという主張は、100年前の制度に戻せという主張に他なりません。年齢以外
 でも、年少者に対する処罰強化の主張は、概して19世紀以前の制度と同様の内容です。
 「昔の方が良かった」ことも多々ありますが、判断には歴史の知識が必要です。旧制度を知らない人は、旧制度の廃止理由
 とされた欠点も知らない筈です。無自覚な旧制度復活主張の行先は、失敗反復です。
4.「酒鬼薔薇」当時の少年犯罪は、激増していなかった。
  公表された統計によれば、真実は「激減」中の一時的微増でした。なのに、報道は揃って「激増」だと言い、「記事」の
 数は普段の10倍を超える激増でした。多くの人々は「事件」が激増していると誤解し、情報操作の成功による世論の支持を
 得て、少年法「改正」が実現しました。
(AGULS第42号(2021/1/25)掲載 )