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TOP >  ブログ >  2023年度 >  貸家の修繕義務について

貸家の修繕義務について


愛知学院大学特別教授・弁護士 國田武二郎
Q:風のため、住んでいる賃貸家屋の屋根が損傷し、雨漏りがしています。このため、次の防雨風の時が大変心配なので、大
 家さんに修繕をお願いしていますが、修繕に応じてくれません。そこで、とりあえず、自費で修繕して、その費用を大家さ
 んに請求したいと思いますが、可能でしょうか。
A:ここ数年、大きな自然災害が起こっています。地球温暖化が原因ともいわれていますが、今年は、平穏な年であって欲し
 いと願うばかりです。
 1.自然災害が発生すると、設問のような問題がしばしば起こり、住んでいる人が困惑するものです。民法は「賃貸人は、
  賃借物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」(606条)とあり、基本的には、自然災害など不可抗力であっ
  ても貸主である大家が修繕義務を負います。したがって、大家が修繕をしない場合、使用できない割合に応じて賃料の全
  部または一部の支払を拒むことができます。さらに、本年4月から施行される改正民法では、借主は、貸主に修繕が必要
  であることを通知したにもかかわらず、貸主が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、あるいは、「急迫の事情があ
  る」ときには、借主による修繕を認める規定を新設しました(607条の2)。したがって、損傷の結果、雨漏りなどが
  ひどく住めないような場合は、「急迫の事情があるとして」すぐに修繕に取り掛かることができます。このように借主
  が、自費で修繕した場合は、その修繕費を貸主に請求することもできます。また、貸主が修繕費を支払わない場合は、修
  繕費と家賃を相殺することもできます。もっとも、損傷の原因(借主に責任がある場合は、貸主は修繕義務を負いませ
  ん)や必要性、さらに修繕の費用は高額であることから、大家とトラブルになる場合もあるので、事前に大家と話し合う
  ことは必要です。
 2.また、災害救助法では、修繕費を支給してもらえる「応急修理制度」があります。したがって、貸主が修理に応じない
  場合には、借主も、この制度を利用できます。ただし、修理の必要性については、専門家による調査などがあるので、詳
  しいことは市町村の担当窓口で相談してみてください。
(AGULS第70号(2023/5/25)掲載)