「死後の手続きについて(その2)」
愛知学院大学特別教授 弁護士 國田 武二郎
Q: 父親が85歳で亡くなりました。相続人は、同居していた母親(81歳)と私(長男)と長女(他家に嫁ぐ)です。年金関係はどうなるでしょうか。
A: 老後の年金は死亡した月の分まで受給でき、遺族が請求できます。ただし、父親の死後、速やかに年金受給中止の手続きを行って下さい。これを怠ると①未支給年金や②遺族年金を受け取ることが出来なくなります。①の点ですが、年金は偶数月の15日に直前の2か月分が支払われます。例えば、4月1日に亡くなった場合、遺族は、4月に振込まれる2月・3月分と、6月に振込まれるべき4月分を未支給年金として受け取る権利があります。つまり、故人の年金の最大3か月分を受取ることができます(したがって、数十万円という金額になることもあります)。もっとも、未支給年金を受け取ることができるのは、生計を同一にしていた遺族です。そして、配偶者がいる場合は、子より優先されるので、子が代わりに手続きする場合は委任状が必要です。請求手続きは最寄りの年金事務所に故人の年金手帳、通帳、身分関係確認書類として戸籍謄本、生計同一の確認書類として住民票が必要です。説例では、母親が全額受け取ることができます。つまり、遺産分割の対象にはなりません。 上記の説例で、父親が一人暮らしをしていて長男らは生計を同一にしていない場合、長男らは、「生計同一関係に関する申立書」を年金事務所に提出する必要があります。つまり申立書に「父親に経済的な援助をしたり、定期的に会っていたりしていた事実」等を書いて申立てをすれば、請求が認められます。 ②の点ですが、「遺族基礎年金」は国民年金や厚生年金の加入者が亡くなった場合に、対象は、子供のいる配偶者、もしくは子供に支給されます。対象は「18歳になってから最初の3月31日を迎えていない子供」か「20歳未満で障害年金の傷害等級1級か2級の子供」がいる場合に限られます。「遺族厚生年金」は、厚生年金に加入している人が亡くなった場合、遺族基礎年金とは別に支給されます。対象は、死亡した人によって生計を維持されていた人」に限られます。退職して厚生年金の被保険者を外れていても受給できます。その他、「中高齢寡婦加算」、「寡婦年金」、「死亡一時金」などの制度もあるので、詳細は、最寄りの年金事務所や年金相談センター等で聞くといいでしょう。 なお、上記①、②は、故人が死亡してから5年以内に申請をしないと時効で消滅するので注意してください。
(AGULS第75号(2023/10/25)掲載)
Q: 父親が85歳で亡くなりました。相続人は、同居していた母親(81歳)と私(長男)と長女(他家に嫁ぐ)です。年金関係はどうなるでしょうか。
A: 老後の年金は死亡した月の分まで受給でき、遺族が請求できます。ただし、父親の死後、速やかに年金受給中止の手続きを行って下さい。これを怠ると①未支給年金や②遺族年金を受け取ることが出来なくなります。①の点ですが、年金は偶数月の15日に直前の2か月分が支払われます。例えば、4月1日に亡くなった場合、遺族は、4月に振込まれる2月・3月分と、6月に振込まれるべき4月分を未支給年金として受け取る権利があります。つまり、故人の年金の最大3か月分を受取ることができます(したがって、数十万円という金額になることもあります)。もっとも、未支給年金を受け取ることができるのは、生計を同一にしていた遺族です。そして、配偶者がいる場合は、子より優先されるので、子が代わりに手続きする場合は委任状が必要です。請求手続きは最寄りの年金事務所に故人の年金手帳、通帳、身分関係確認書類として戸籍謄本、生計同一の確認書類として住民票が必要です。説例では、母親が全額受け取ることができます。つまり、遺産分割の対象にはなりません。 上記の説例で、父親が一人暮らしをしていて長男らは生計を同一にしていない場合、長男らは、「生計同一関係に関する申立書」を年金事務所に提出する必要があります。つまり申立書に「父親に経済的な援助をしたり、定期的に会っていたりしていた事実」等を書いて申立てをすれば、請求が認められます。 ②の点ですが、「遺族基礎年金」は国民年金や厚生年金の加入者が亡くなった場合に、対象は、子供のいる配偶者、もしくは子供に支給されます。対象は「18歳になってから最初の3月31日を迎えていない子供」か「20歳未満で障害年金の傷害等級1級か2級の子供」がいる場合に限られます。「遺族厚生年金」は、厚生年金に加入している人が亡くなった場合、遺族基礎年金とは別に支給されます。対象は、死亡した人によって生計を維持されていた人」に限られます。退職して厚生年金の被保険者を外れていても受給できます。その他、「中高齢寡婦加算」、「寡婦年金」、「死亡一時金」などの制度もあるので、詳細は、最寄りの年金事務所や年金相談センター等で聞くといいでしょう。 なお、上記①、②は、故人が死亡してから5年以内に申請をしないと時効で消滅するので注意してください。
(AGULS第75号(2023/10/25)掲載)