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「遺言について(自筆証書遺言)」


愛知学院大学特別教授・弁護士 國田武二郎
 

Q:遺言書を作成して兄弟姉妹間の争いを未然に防ぎたいと思いますが、遺言には、どのような遺言がありますか。
A:1 相続に関して法律で決められているのは、法定相続分の割合だけです。だれがどの財産を相続するかについては、定めがありません。このため、それまで仲のよかった兄弟姉妹間で争うケースが多々あります。相続が「争族」となります。このような問題を解決するのが遺言書です。遺言として、一般的な遺言は、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3つに分類されます(臨終の際、筆記できない状況下で、口頭で遺言する危急時遺言(ききゅうじ・ゆいごん)や船の遭難時に行う船舶遭難者遺言(せんぱくそうなんしゃ・ゆいごん)などの特別方式の遺言もありますが、これらの遺言は一般的でないので説明を省きます。)
  2 自筆証書遺言は、自分自身で書く遺言書で紙と筆記用具さえあればいつでも手軽に遺言を残せます。全文、自筆で書かれていることが必要で、ワープロやパソコン、タイプ、点字の機械等を使用した遺言書は無効です。また、レコーダーへの吹き込みなど音声による遺言も認められません。作成年月日を正確に書き(「平成29年10月吉日」の記載は、日の記載が不明確で無効です。しかし「満70歳の誕生日」、「還暦の日に」という記載は、特定できるので有効です。)、氏名はフルネーム(戸籍謄本どおりに書く)で記載し押印(実印が好ましいが、認印でも有効です。また、拇印でも有効)します。簡単に作成できて費用もかからない、遺言の内容を秘密にできる、証人もいらないという点では長所ですが、様式不備で無効となることがある、紛失や盗難のおそれがある、死後発見されないケースもある等が短所です。
 3 自筆証書遺言が発見されたら、速やかに家庭裁判所に提出して、検認(けんにん)手続きを請求しなければなりません。検認とは、遺言書の用紙や枚数、筆記用具、内容、日付、署名、印がどのようなものかを調書に記録することをいいます。自筆証書遺言は、自分一人で書ける遺言だけにその有効性について、厳格に規定し、遺言書の偽造、変造などを防いでいるのです。したがって、検認手続きを怠った場合5万円以下の過料に処せられます。また、故意に遺言書を隠した場合、相続人であれば相続人資格が失われます。
 4 封印のある自筆証書遺言の開封は、家庭裁判所のもとで、相続人またはその代理人の立会いのもとで開封しなければなりません。たとえ相続人全員がそろっても家庭裁判所以外の場所で開封すると過料に処せられます。

(AGULS87号(2024/10/25)掲載)