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言葉の意味に御注意を!


愛知学院大学名誉教授・弁護士 原田保

 言葉は、誤用または新用法として、本来の意味と異なる意味で使用されることがあります。異なる意味を知らずに使用すると、誤解を生じて紛争になることがあり得ます。例を幾つか挙げておきます。

★ボランティア
 「無料奉仕」という意味の使用例がありますが、本来の意味は「任意」で、有料・無料は関係ありません。自由意思で兵役に従事する「志願兵」は、ボランティアの訳語として英和辞典に記載されていますが、兵役の報酬は支給されます。観光地で見かける「ボランティア・ガイド」も大抵は有料ですが、「ボランティアが金銭を取るのはおかしい!」と憤激した人がいました。
★リベンジ
 英和辞典訳の訳語は「復讐、腹いせ」で、内容は「怨恨に基づく加害」です。昨今使用される「再挑戦」という意味は、英和辞典に見当たりません。英和辞典には「雪辱戦」という訳語もあり、「仇討ち果し合い」の意味で記載したと思われますが、これを明るく健全に「次は勝つ」という意味だと誤解した人がいると推測されます。英語圏からの帰国子女が日本のTVニュースで競技敗者の「リベンジ」発言を聞いて「恐ろしい人だ」と思ったという実例もある由です。人に向かって「リベンジ」を宣言すると、加害の予告ですから、脅迫になります。
★確信犯
 本来の意味は「世のため人のため」といった公益的義務感を動機とする犯罪であり、このような犯罪者への表敬として作業義務のない自由刑が用意されました。この優遇が確信犯概念提唱の理由でしたが、昨今は、
 ➀国の現行法により正しいと誤解して遂行した犯罪
 ②国の現行法により悪いと知りながら自己の欲望で遂行した犯罪
という2種類の誤用・新用法が流布されています。①は知識不足、②は規範意識鈍麻、という批判的趣旨であり、本来の表敬的趣旨とは真逆です。本来の意味・趣旨を知らない人による誤用・新用法だと思われますが、誰かを「確信犯」と呼ぶと、異なる意味に理解した人を憤激させることがあり得ます。

 言葉の意味の混乱は、他にもあります。愛知学院大学社会連携センター(法務支援)HPブログ2017年度掲載「言葉・文化」等を御参照下さい。

(AGULS98号(2025/09/25)掲載)