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マイナ免許証


愛知学院大学名誉教授・弁護士 原田保

 自動車運転に際して、マイナ免許証を携帯すれば従前からの運転免許証を携帯しなくてもよい、ということになった由です。この制度は、運転免許証携帯義務および運転免許証不携帯罪の根拠に疑義を生じさせます。議論の情報は得ていませんが、問題を提起しておきます。
運転免許証携帯義務が課されるのは、簡易・迅速な運転資格確認のためです。多数の自動車が走行する道路で自動車を停止させるのですから、長時間に亘と交通妨害になって危険です。運転免許証を提示すれば数秒で済みますが、運転免許証が提示されなければ公安委員会に照会することになって相当の手間・時間を要します。この手間が運転免許証不携帯罪の処罰根拠だと解されています。
 しかし、マイナ免許証を視認しても運転資格の有無は判りません。必然的に通信を要します。医療機関でのマイナ保険証による保険医療資格確認は早くて30秒程度であり、マイナ免許証による運転資格確認が同様であるなら、簡易・迅速から懸け離れています。警察官がカード読取機器を携帯していなければ、公安委員会に照会する他なく、マイナ免許証携帯は無意味になります。
 このように手間・時間を要する運転資格確認方法の採用は、運転資格確認に関する簡易・迅速の放棄と解されます。そうすると、簡易・迅速のために規定された運転免許証携帯義務も運転免許証不携帯罪も、根拠を失ったことになります。刑罰でも行政罰でも、処罰は合理的根拠を欠く憲法31条違反であるという批判を受ける可能性があります。いずれ、裁判で主張されるかもしれません。
 更に、マイナ免許証携帯を無意味にしないためには多数警察官がカード読取機器を携帯しなければなりません。高額の予算措置を要することは確実です。政府は、ポイント付与や健康保険証廃止といった措置を執りました。そこまでしてマイナカードを多くの人々に持たせたいという政策欲求は明白です。マイナカード関係業界の利潤が推測されますが、私は論評する立場にありません。

 なお、日本全体でマイナカードを持っていない人は約2割であると報じられていました。コロナワクチンを接種していない人も約2割であるとのことです。政府の方針に従わない各々の約2割の人々が、概ね一致するのか別々なのか、やや気になるところです。

(AGULS108号(2026/07/25)掲載)