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コロナと移動の自由への制限


 愛知学院大学法務支援センター教授 初川 満
 憲法は、22条に国内外への移動の自由を保障している。そして、移動には、旅行は勿論の事通勤や通学を含む日常生活における外出も、当然に含まれる。但し、この移動の自由も絶対的なものではなく、「公共の福祉に反しない限り」という制約があり、最高裁判所は、規制措置は重要な公共の利益のために必要かつ合理的でなくてはならない、と述べている。
 では、ロックダウンのような移動の自由への制限は、国際社会においてはいかなる条件の下で許されるのであろうか。以下に、国連が1966年採択し、日本も1979年批准した、市民的政治的権利に関するいわゆる自由権規約を見ていくこととしよう。同規約は、国連加盟国193ヶ国中173ヶ国が締結していることから、人権保障の国際基準となってきている。
 自由権規約は、12条に移動の自由を規定し、この自由への制限が許される条件を3項に明記している。これによると、制限は、①「法律によるもの」でなくてはならない。②「国の安全、公の秩序、公衆の健康もしくは道徳、他の者の権利及び自由を保護するため」という正当な目的のいずれかのためにのみ、許され得る。③「必要な」すなわち民主的社会において合理的に必要と考えられるものでなくてはならない。
 ここで、各条件を詳しく見ていくとしよう。
 ①は、民主的社会においては、国民の代表が構成する議会により採択された法律のみが人権を制限し得る、ということを明
 示している。
 ③は、権利への制限は、いかなるものであれ、追及する目的に比例しかつ当該事件における状況下で必要な限度でなくては
 ならない、ということを含んでいる。すなわち、制限の目的を達成するために求められ以上の制限手段は、用いるべきでは
 ない。
 公共の利益と個人の利益間の衝突において、「必要な」という条件のみでは個人の保護には不十分である。そこで、こうした制限を正当化する根拠についても限定し明記する②の条件が加えられている。
 ここで、条件②の正当な目的の中で、コロナ禍での移動の自由への制限を正当化するものについて見ていくとしよう。
 まず、住民の健康への重大な脅威に対処するために制限措置を採ることを国家に許すためにのみ、「公衆の健康」を制限根拠として主張し得る。よって、伝染病にかかった人の強制隔離や入院、あるいは危険地区への立ち入り禁止なども、これを理由として行い得る。
 また、公衆の脅威となる者の移動の自由への規制は、必要で、比例していて、かつ、差別的でない場合には、「他の者の権利」のために正当化され得る。
 これにより国際社会は、制限の条件について詳細に規定しかつ厳格な解釈を求め、国家による個人への人権侵害を防ぐと共に公益にも配慮することで、バランスを採っているといえる。