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不知・誤解の多い事柄 [その2]


愛知学院大学法務支援センター客員教授 原田 保
 令和3年1月25日のAGULS第42号に書いた①~④の続きです。 前回も御願いしましたが、正しい情報の拡散に御配慮下さい。
⑤ 「ノン・アルコール」でも、飲んで運転したら違反になる。
 道路交通法65条1項の酒気帯び運転禁止規定は、アルコール量を限定していません。ノン・アルコールは概して「酒」と表示できない程度に微量のアルコールであり、如何に微量でも体外からアルコールを入れたら直ちに酒気帯びです。この状態での運転は、当然に違反です。
 そして、この違反行為への対処には、下記の3種類があります。
1.正常な運転ができないおそれ→→→→→→→上限懲役3年 (117条の2)
2.政令で定める基準以上にアルコールを保有→上限懲役1年 (117条の4)
3.上記基準未満→→→→→→→→→→→→→→不処罰(規定なし)
 昔の道路交通法は、処罰基準以上のアルコール保有だけを禁止していました。しかし、処罰基準未満でもアルコール保有運転を許容するべきではないとの理由で改正され、処罰基準未満も禁止に含められたのです。
 「処罰されない=違反ではない=やってもいい」は、重大な誤解です。法律上いけないけれど処罰されない行為は、未成年飲酒、売春本体行為、不倫、等々、幾らでもあります。ノン・アルコールは、処罰基準未満に留まることが多くても、量によっては処罰基準以上になることがあり、不処罰でも法律の禁止規定に違反することに変わりはありません。運転者向けの宣伝は、違反行為の推奨であり、法規範への敵対です。
⑥ 「路上飲酒」は、犯罪になる。
 道路交通法76条4項2号は、寝そべる、すわる、しゃがむ、立ちどまる、という行為を禁止しています。酔ってふらつくことも、同条項1号が禁止しています。「交通の妨害になるような方法で」という限定が規定されていますが、TVで報道された路上飲酒の相当数はこの禁止規定に違反しています。120条1項9号により上限罰金5万円の刑が科される犯罪ですが、検挙報道は見当たりません。酒に弱いのに飲酒が強要され、欧州のような「公然酩酊罪」がなく酩酊に寛容、という日本の特質なのでしょう。
⑦ 泥酔による心神喪失でも、法的責任を問われる。
 民法713条本文、刑法39条1項は、心神喪失なら法的責任を負わない旨を規定しています。でも、通常の判断・行動制御の可能な状態で飲酒を開始したなら、自分の行為から生じた結果に責任を負わねばなりません。民法713条但書には、故意・過失により責任無能力を招いた場合には責任を免れない旨の規定があります。刑事でも、「原因において自由な行為」の法理により、やはり責任を問われます。
(AGULS第51号(2021/10/25)掲載 )