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「私的整理について」


                                     愛知学院大学教授 弁護士 浅賀 哲

 コロナ禍の状況下では、経営が悪化して倒産の危機に瀕している企業も増えています。経営危機に陥ってしまったとき、借入金などの負担を軽減できる「私的整理」が有用です。
 私的整理には、破産や民事再生などの法的整理と比較すると、迅速・柔軟に債務を軽減できるメリットがあります。

○ 私的整理のメリット
 私的整理のメリットは、迅速・柔軟に債務負担を軽減できます。私的整理は、借金、買掛金等のある債務者が、銀行、仕入先等の債権者と協議をすることによって、債務カットを実施します。債権者の同意さえ得られれば、すぐにでも債務カットができるのが大きな特徴です。
 私的整理の対象とする債権者は、債務者が選択できます。そのため、仕入先については、通常のとおりの支払を実施して仕入ルートを維持し、銀行等の金融機関のみを私的整理の対象として、債務の減額を図ることが可能となります。私的整理は、選択をした特定の債権者との間で非公開で協議を行うため、債権者との間で合意に至れば、取引先や顧客に知られることなく、事業の再生を図ることが可能です。この点、破産や民事再生などの法的整理では全ての債権者を対象にしなければならないため信用毀損をしてしまう可能性があるのですが、私的整理は信用毀損をすることがなく、この点が大きなメリットとなります。ただ、デメリットもあります。

○ 準則型私的整理手続
 何分、私的整理は債権者の同意・了解を得られなければ成立しないことがデメリットといえます。私的整理を実施する場合、債務者は合理的な再建計画を丁寧に説明して、債権者の納得を得るよう努めなければなりませんが、必ずしも債権者が同意をしてくれるとは限りません。
 この点で、準則型私的整理手続が注目されています。これは、中立・公平な第三者機関が関与した一定の準則(ルール)に基づく手続きであり、かかる手続を履行することにより、第三者機関の助力により、債権者の同意が得られる可能性が高まります。
 準則型私的整理手続には、私的整理ガイドラインに基づく手続き、大企業向けの事業再生ADR、中小企業再生支援協議会が実施する手続、地域経済活性化支援機構(REVIC)が関与するスキーム、簡易裁判所が関与する特定調停など様々なスキームがあります。

○ 一人で悩まないで下さい
以上のとおり、事業再建の方法は日々進化しております。
 経営が苦しく悩んでいる事業者の方におかれましては、一人で悩まずに、是非弁護士等の専門家の助力を得ることをお考え下さい。

(AGULS第74号(2023/9/25)掲載)