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倒産法概観(倒産時の初期対応)


[浅賀 哲]
破産法、民事再生法、会社更生法等の概観を説明し、各種倒産手続きの理解の一助とすることを目的とする。債権者側の対応などについても、広くテーマとする。

倒産法の概観と取引先倒産時の初期対応

point
1 債権管理,保全等日常の与信管理が何よりも肝要です。
2 倒産手続には,私的整理と法的整理の2種類があります。
3 限定された債権回収方法をタイムリーに行う必要があります。

1 破綻の予兆
(1)決算の悪化(売上額の減少,利益の減少)
与信管理→①適切な与信限度額の変更を実施する
     ②債権保全や圧縮に着手する(担保権の設定,反対債権の創出)

Q 継続的取引を解約することはできるのか→不安の抗弁権
                     独占禁止法

Q ゴーイングコンサーン疑義の注記はどうか

(2)資金繰りの悪化→債務不履行(手形のジャンプ要請・支払期限の延期)
Q 経験上どのような事例があったのか

(3)受任通知・再生手続開始の申立ての通知書の受領と対応
→受任通知書(書式例 57頁)債権調査票(書式例 58頁)
→保全処分決定書(書式例 205頁),監督命令書(書式例 208頁)
→債権者説明会の案内

Q【債権調査への協力】
受任通知書に債権調査票が添付されていた。この債権調査に協力する必要はあるのか

Q 債務者は、いつから法的手続を進めるのか

Q 何曜日が危ないのか

data
2008年全国企業倒産概況(負債1000万円以上)
①倒産件数 1万5646件(前年比 11%増)
②負債総額 12兆2919億円(前年比 2・1倍増 5年ぶりの高水準)
③上場企業の倒産数 33件(前年比 5・5倍増 戦後最多)

コラム 
与信管理の方法

2 破綻のはじまり
(1) 倒産手続
私的整理 
 私的整理のガイドライン 一般の商取引債権は権利の変更の対象とならない
 中小企業再生支援協議会 
 (特定調停)
  通常の私的整理
法的整理 
  民事再生
  会社更生
  破産
  特別清算

(2) 破産手続の概観 →37頁の表
(3) 再生手続の概観 →191・190頁の表

コラム
民事再生の三つの型
①自力再生型
②スポンサー型・事業譲渡型 → プレパッケージ型
③清算型

3 対応・回収方法
(1) 商品・原材料・什器備品の持出し・引揚げの可否
①債務者の承諾がない場合には,商品の引揚げはできない。
②債務者の代表取締役等の管理者の承諾がある場合には,持出しができるが,否認権行使(破産
 法160以下,再生法127以下)の問題が生じる。
③所有権留保特約がある場合には,債権者は別除権者となり,引揚げは有用な回収方法といえる。
 
(2) 財産状況報告集会・債権者説明会
①財産状況報告集会は,破産開始決定後3~4ヶ月後である。
②再生手続開始の申立直後に,債権者説明会が開催されることがある。主催者は裁判所ではなく,再生申立人である。
③債権者としては,今後の再生手続の進行,スポンサーの有無,他の債権者の動向等の情報を入手し,今後の再生手続上の対応,取引を継続するか否かを検討する。

Q 債権者説明会に出席しないと不利益があるのか。債権者説明会は1回か。

Q 債権者説明会へは,どのような姿勢で臨むべきか

(3) 弁済禁止の保全処分・中止命令
①再生手続開始の申立てがなされた場合には,裁判所は棄却事由の有無を判断する間に債務者財産の不当な散逸を防止し,公正・衡平かつ迅速な再生手続の進行を図るため,弁済禁止の保全処分を下す。
②弁済禁止の保全処分が発令された場合でもすべての支払が禁止されるわけではなく,事業遂行に不可欠な従業員の給与,事務所の賃料,光熱費,通信費,さらには少額債権等については支払が禁止されないことがある。
③裁判所は,再生債務者についての強制執行,仮差押,仮処分,訴訟手続等の中止や取消しを命じることがある。

Q リース契約の取扱

Q 債権の一部放棄により少額債権として,支払いを受けることはできるか。

(4) 裁判所から送付される書類
①破産手続開始の決定後,裁判所は債権者に対し,破産手続開始通知書及び破産債権届出書の用紙を送付する(書式例 79頁)。
②破産手続開始通知書には,事件番号,管財人の氏名及び連絡先,破産債権届出書を提出する期限等が記載されている。
③再生手続開始の決定後,裁判所は債権者に対し,再生手続開始通知書及び再生債権届出書の用紙を送付する(書式例 214頁以下)。
④再生手続開始通知書には,事件番号,再生債権届出書を提出する期限等が記載されている。再生債権の届出期間には十分に注意する必要がある。相殺の権利行使期間という点でも重要である。

(5) 債権者への影響
①破産手続上,債権は破産債権に優先して破産手続によらずに随時に支払を受けられる財団債権と,破産手続に従ってのみ権利行使が可能な破産債権に分かれる。
②破産債権は,届出・調査・確定を経て,配当を受ける。

→債権の種類と優先順位(表 93頁)

③再生債務者に対する債権は,原則として,発生の原因が再生手続開始の決定の前後により再生債権と共益債権に権利内容が変更される。
④再生債権は,再生計画に従って権利内容が変更される。共益債権は,随時に支払を受けられる。
⑤再生債権でも,少額債権及び中小企業者の債権について,例外的に再生計画によらずに弁済を受けられる制度がある。

コラム
マツヤ電機事件
そごう事件

(6) 担保を取っている債権者への影響
①主債務者が破産しても連帯保証人に対する請求は可能である。連帯保証人から全額の返済を受けていない限り,主債務者の破産手続において,破産手続開始の決定時点での債権額について破産債権届出をすることができる。
②破産者の担保権を有する債権者は別除権者として扱われ,破産手続によらずに担保権を実行して回収を図ることができる。破産管財人が担保目的物を任意売却し,その代金から回収する場合もある。
③担保権を有している場合,原則として実行が可能だが,裁判所が中止命令・担保権消滅許可等を出す場合がある。
④担保権を実行しない場合,再生債務者との間で別除権協定を締結し,再生計画ではなく,別除権協定に従った弁済を受ける。
⑤連帯保証人に対しては,再生手続によらずに請求が可能である。

コラム

相殺


(7) 破産債権届出書・再生債権届出書の記載,添付書類
①配当を受けるためには,破産債権届出書を提出する必要がある。
 →(書式例 162頁~171頁)
②再生手続きによる権利行使をするためには,再生債権届出書を提出する必要がある。
 →(書式例 265頁~269頁)

(8) 配当・再生計画