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取締役の報酬と責任


[服部 育生]
取締役の報酬・責任をめぐり実務で生じる問題
講演:取締役の報酬と責任  服部育生


[1]金額の確定した報酬
  (1)定款又は株主総会決議により、複数名いる取締役の報酬総額の最高限度額(月額が多い)
     を定める(§361①1号)。
  (2)各取締役への配分額は、取締役会の決定による。
  (3)取締役会は(2)の決定を代表取締役に一任できる。
  (4)使用人兼務取締役(使用人として受ける給与は別)

[2]金額の確定しない報酬
  (1)賞与を中心とする業績連動報酬
  (2)定款又は株主総会決議により、具体的な算定方法を定める。その算定方法を相当とする理
     由の説明が必要になる(§361①2号④)
  (3)ストック・オプションの付与には、新株予約権の発行規制も及ぶ。

[3]金銭でない報酬
  (1)低賃料による社宅   親族を受取人とする生命保険等
  (2)定款又は株主総会決議により、具体的な内容を定める(§361①3号)。

[4]開示
  (1)公開会社   各年度の報酬総額は事業報告で開示(則§121-4)
  (2)社外取締役   別途記載(則§124-5・6)
  (3)1億円以上の取締役   有価証券報告書に各人ごと記載
          (企業開示15条1号)

[5]報酬の変更
  (1)具体的に定められた報酬額は契約内容―→株主総会で決議しても、当該取締役の同意がな
     ければ、減額不可
  (2)報酬が役職ごとに定められ、任期中に役職変動があれば、自動的に新役職の報酬に変更―
     →このような慣行を予知した上で取締役へ就任した者は、減額に黙示的同意(役職変動に
     正当事由必要)。

[6]取締役の任務懈怠責任   §423①
  (1)任務懈怠 + 帰責事由 + 会社の損害 + 因果関係
  (2)任務懈怠 その1   注意義務・忠実義務違反
     経営判断原則   監視義務   内部統制システム
  (3)Bが監視義務を果たしても、Aはそれを無視―→因果関係否定?
  (4)任務懈怠 その2   法令違反
     法令違反を認識せず、それについて無過失―→責任なし
     他の行為をする気体可能性なしも帰責事由なし?
  (5)責任免除   総株主の同意   §424
  (6)一部免除   §425~§427
     株主総会特別決議   取締役会決議   責任限定契約

[7]第三者に対する責任   §429
  (1)会社債権者の直接損害・間接損害
  (2)株主の直接損害
     株主の間接損害は代表訴訟による
  (3)任務懈怠 + 悪意・重過失 + 第三者の損害 +因果関係
  (4)名目的取締役
  (5)登記簿上の取締役