合併比率の不公正と株主
[服部 育生]
合併比率はどのように算出されるか
講演:合併比率の不公正と株主 服部育生
[1]設例
(1)A社はB社の株式の68%を所有している。
(2)A社はB社を吸収合併する。
(3)吸収合併契約では、B社の株主bには、その保有するB株式1株につき、A株式0.2株
が割当てられる(合併比率1:0.2)。
(4)A株式の1株純資産額は900円、B株式の1株純資産額は650円である。A株式の1
株純利益は78円、B株式の1株純利益は55円である。〔株主bへの割当対価が過小〕
(5)吸収合併に不満のある株主bには、何ができるか?
[2]株式買取請求権
(1)株主bは、合併承認株主総会に先立ち、吸収合併に反対する旨をB社に通知し、かつB社
の総会で合併承認決議に反対の議決権行使する(§785②1号イ)。
(2)株主bが株式買取請求権を行使した場合の買取価格は、「公正な価格」であることを要す
る(§785①)。
(3)公正な価格とは、(ア)合併なかりせば価格と(イ)合併シナジーを公正に反映した価格
のいずれか高い方を指す。
[3]差止請求?
(1)吸収合併が法令・定款に違反する場合 §784の2第1号合併比率の不公正は法令違反
ではない。
(2)略式吸収合併ならば、合併比率の不公正は差止事由となる。 §784の2第2号
[4]合併無効事由
(1)合併比率の不公正は無効事由とならない(判例)。
(2)合併比率の「著しい不公正」は無効事由となる(一部の学説)。 1:0.7が相当であ
るときに1:0.2は著しく不公正?
(3)特別利害関係株主(A社)の議決権行使により、B社の株主総会で著しく不当な決議(著
しく不公正な合併条件を内容に含む合併契約の承認)がなされた。
―→B社総会決議に取消事由(§831①3号)―→合併無効事由
[5]取締役の損害賠償責任
(1)不利益を被った株主bがB社の取締役に対して直接的な損害賠償を請求する
(§429)余地がある。
(2)もしB社がA社を吸収するケースで、A社の株主aに、その保有するA株式1株につきB
株式3株が割当てられるとすれば、どうか。〔B社が株主aに過大な対価を割当〕
講演:合併比率の不公正と株主 服部育生
[1]設例
(1)A社はB社の株式の68%を所有している。
(2)A社はB社を吸収合併する。
(3)吸収合併契約では、B社の株主bには、その保有するB株式1株につき、A株式0.2株
が割当てられる(合併比率1:0.2)。
(4)A株式の1株純資産額は900円、B株式の1株純資産額は650円である。A株式の1
株純利益は78円、B株式の1株純利益は55円である。〔株主bへの割当対価が過小〕
(5)吸収合併に不満のある株主bには、何ができるか?
[2]株式買取請求権
(1)株主bは、合併承認株主総会に先立ち、吸収合併に反対する旨をB社に通知し、かつB社
の総会で合併承認決議に反対の議決権行使する(§785②1号イ)。
(2)株主bが株式買取請求権を行使した場合の買取価格は、「公正な価格」であることを要す
る(§785①)。
(3)公正な価格とは、(ア)合併なかりせば価格と(イ)合併シナジーを公正に反映した価格
のいずれか高い方を指す。
[3]差止請求?
(1)吸収合併が法令・定款に違反する場合 §784の2第1号合併比率の不公正は法令違反
ではない。
(2)略式吸収合併ならば、合併比率の不公正は差止事由となる。 §784の2第2号
[4]合併無効事由
(1)合併比率の不公正は無効事由とならない(判例)。
(2)合併比率の「著しい不公正」は無効事由となる(一部の学説)。 1:0.7が相当であ
るときに1:0.2は著しく不公正?
(3)特別利害関係株主(A社)の議決権行使により、B社の株主総会で著しく不当な決議(著
しく不公正な合併条件を内容に含む合併契約の承認)がなされた。
―→B社総会決議に取消事由(§831①3号)―→合併無効事由
[5]取締役の損害賠償責任
(1)不利益を被った株主bがB社の取締役に対して直接的な損害賠償を請求する
(§429)余地がある。
(2)もしB社がA社を吸収するケースで、A社の株主aに、その保有するA株式1株につきB
株式3株が割当てられるとすれば、どうか。〔B社が株主aに過大な対価を割当〕